みなさん、こんにちは。
みなさんは、電子レンジを使ったことがありますか?
この質問に対して、「いいえ」と答える人は、ほとんどいないと思います。
それでは、電子レンジの原理について知っていますか?
電子レンジの原理についても、最近は多くのテレビ番組で紹介されているので、知っている人は多いかと思います。
では、電子レンジの機能で、「温め」と「解凍」の違いを知っている人はいるでしょうか?
電子レンジの温めの基本原理を知っていても、「温め」と「解凍」の原理の違いを説明できる人はあまり多くないと思います。
今日は電子レンジの「温め」と「解凍」機能の違いについて、お話ししたいと思います。
1.電子レンジの原理
まず初めに、簡単に電子レンジの原理から。
皆さんご存知のように、電子レンジは、マイクロ波という電波で食品を加熱しています。
電子レンジは、アメリカの軍事用レーダーの研究者が、実験中にポケットに入っていたチョコレートが溶けたことで偶然発見されたと言う話は、とても有名です。
でも、この話の真偽は定かではありません。
電子レンジの内部には、マグネトロンと呼ばれる部分があり、ここからマイクロ波が発生する仕組みになっています。
マイクロ波は電波の一つです。
周波数が300MHzから300GHzの電波をマイクロ波と呼びます。
水が最も効率よく吸収できるマイクロ波の周波数は、18GHzと言われています。
大雨の時に、BS放送が見えにくくなるのは、BS放送の電波が12GHzの周波数を使っているため、電波が水に吸収されてしまうためです。
マイクロ波は水に吸収されやすいという事実が理解出来るかと思います。
電子レンジでは、工業用、科学用、医療用を目的として国際電気通信連合が割り当てた周波数(ISM周波数と言います)で電波法の制限を受けない2450MHzの周波数のマイクロ波が利用されています。
この周波数では、なんと1秒間に24億5千万回も(+)と(-)の電場が変化するのです。
水やアルコールのように極性がある(+と-の電荷の重心が一致していないこと)分子は、マイクロ波の照射による電場の変化によって、水分子がいっせいに方向を変えようとします。
その結果、水分子と水分子の間で摩擦が起こり、その摩擦熱によって水が温められます。
多くの食品の内部には、水が含まれています。
電子レンジは、この水を加熱することによって、食品を温めているのです。
興味深いことに、
水分子に当てるマイクロ波の周波数が低すぎると、電場の変化が遅くなり、分子がスムーズに動いてしまう為に、水分子間での摩擦が起きず、熱が発生しません。
一方、
電場の変化が速すぎても、水分子は動きについてこれず、ほとんど動けなくなってしまい、摩擦熱が起きないのです。
電子レンジによる水の加熱には、適当な周波数のマイクロ波の照射が必要になります。
2.電子レンジの解凍の原理
さて、次に電子レンジで氷を温めると、氷は溶けるでしょうか?
答えは「いいえ」です。
氷の結晶の中にある水分子は、液体の水分子に比べて分子間結合が強いので、液体の水分子と比べて、ずっと動きにくい状態にあります。
したがって、
2450MHzの周波数のマイクロ波では電場の変化が速すぎて、氷の結晶の中にある水分子をうまく動かすことが出来ないのです。
氷を溶かすには、もっと低い周波数のマイクロ波を当てて、電場をゆっくり変化させる必要があります。
逆に、
氷専用の周波数に調節したマイクロ波では、液体の水にとって電場の変化が遅すぎるので、氷が溶けた水を0°C以上に加熱することはできません。
本来であれば、冷凍食品を解凍するためにはISM周波数で2450MHzより低い915MHzの周波数を持つ電子レンジを使います。
915MHzの周波数では、水は温められること無く、氷のみを均一に溶かすことが可能です。
しかし、日本では、電波法の関係で、一般家庭で915MHzの周波数の電子レンジを使うことが出来ません。
そこで、家庭用電子レンジの解凍では、水を加熱する周波数である2450MHzをそのまま使用し、電力を下げることによって出力を弱め、断続的にマイクロ波を照射することによって解凍を行っています。
前述の通り、2450MHzの周波数では氷の解凍よりも、水の加熱の方が効率よく起こります。
その為、冷凍された食品を日本の電子レンジで解凍しようとすると、よく解凍が出来ている部分と、まだ凍っている部分でムラが出来ることがあるのです。
今日は、電子レンジの温めと解凍の違いについて記事を書きました。
家の中には、学校の理科で習ったことを応用している物が沢山あります。
そういう物を解説する記事を、これからもみなさんにお伝えしていきたいと思います。